第11回 「下痢の話」

一般に犬の便は硬く、回数は一日1〜3回くらいです。もし下痢をしても食欲があり、元気な場合は数日間様子をみてもいいでしょう。徐々に便の状態が良くなっていく (硬くなっていく)ようならそのまま回復していくと思われます。しかし、一日に何度も下痢をする、何日も下痢が続く、元気や食欲がなくなってきた、このように症状が 悪化してくる場合や症状が良化しない場合は動物病院を受診することをお勧めします。
下痢や軟便の場合にはその色、形、回数、出血や異物の有無を観察してください。 そして嘔吐が伴うか否かも観察してください。寄生虫の疑いもありますので、便の内容物も観察してください。
下痢の種類
○軟 便・・・・・・形は残っていますが、非常にやわらかくつぶれやすい
○泥状便・・・・・漢字の通り泥のような便です
○水様性下痢・・・水分が非常に多い便で水のような便です
下痢の原因
○食事
消化性の低い食事や食べ過ぎ、食餌内容を変更した場合、食物アレルギー、腐ったものや拾い食いした場合などに起こります。犬の下痢の要因としては最も多く見られます。
○感染症
寄生虫、細菌、ウイルスなどが感染して下痢を起こします。
○毒物・薬物
一部の薬品や毒物の摂取によって下痢を起こします。
○消化器の機能
胃やすい臓、消化管粘膜の病気によって消化力が低下し下痢を起こします。
○全身性の病気
内分泌疾患、肝疾患、腎疾患、腫瘍などでも下痢を起こすことがあります。
○腸内細菌のバランスの変化
抗生物質の投与や腸管の機能異常により腸内細菌のバランスが崩れ下痢を起こします。
○ストレスによる神経性下痢
引っ越しや移動などの環境変化がもたらすストレスによって下痢を起こします。

 
第10回 「嘔吐と吐出」

嘔吐も吐出も「吐く」という症状を表していますが、違いを知っておけば体のどこに異常があるのかが分かります。嘔吐の場合は食べたものを胃や十二指腸から戻し、吐く前におなかの筋肉や横隔膜を収縮させて 吐きます。少し時間をおいて複数回吐くのも特徴です。これに対し、吐出は胃に到達する前に何の前触れもなくすっと吐き出します。 嘔吐であれば胃や腸に、吐出であれば食道に、何らかの問題がある可能性が分かります。嘔吐や吐出した場合、回数が一日一回程度で、元気・食欲がない、下痢・発熱といった病気を示すほかの症状がないときは、数日様子を見てもいいと思います。 しかし、一日に何回も繰り返したり、嘔吐以外の症状も見られた場合、数日間嘔吐が続いている場合には動物病院を受診したほうがいいでしょう。 特に、ぐったりするなどの全身症状がある場合には胃腸の病気だけでなく、肝臓やすい臓に問題がある場合はガンなどの可能性もあります。

 
第9回 「腎臓の話」

腎臓は血液中の老廃物をろ過して尿として排泄し、体内の水分や電解質のバランスを維持しています。腎臓の機能に障害が生じると、血液中の老廃物が蓄積することにより 様々な症状が現れます。しかし、多くの腎臓の組織がダメージを受けるまでは、残りの健康な組織がその機能を代償するため、症状が出るまでには時間がかかります。そのため、気付かない間に腎臓病が進行していくことになります。
腎臓病は原因の部位により3つに大別されます。

  • 腎前性:貧血や脱水、心不全などにより腎臓に送られる血液量が減少するもの
  • 腎性:薬物、感染症、腫瘍などにより腎臓そのものが傷害されるもの
  • 腎後性:尿路結石や腫瘍など尿路系が傷害されるもの

元気や食欲がなくなってきたり、水をよく飲む・排尿の回数が多い、頻回の嘔吐、毛づやが悪くなってきたなどの症状が見られたら早めに検診を受けることをお勧めします。一度障害を受けた腎臓の組織を元に戻すことはできないので 、早期発見し適切な食事管理をすることが重要となります。

 
第8回 「猫の心筋症(心臓の筋肉の病気)」

猫の心筋症は心臓の筋肉の厚さや働きの状態によって大きく3つに分けられます。
 1.肥大型心筋症
猫の心筋症で最も多く発生するタイプで、心臓の筋肉が正常よりも厚くなってしまう病気です。原因は常染色体性優性遺伝と考えられていますが詳細は不明です。肥大型心筋症は他の心筋症に比べ動脈血栓症(下記*印参照)の発生が多くなっています。
2.拡張型心筋症
逆に心臓の筋肉が薄くなってしまう病気です。以前は肥大型心筋症と同等の発生率でしたが、多くがタウリン欠乏により発生することが報告され、各ペットフードメーカーがキャットフードにタウリンを補強したため、拡張型心筋症の発生は減少しました。
3.拘束型心筋症
心臓がうまく広がることができずに働きが低下してしまう病気です。原因は感染症や自身の免疫の不具合によって生じた心筋の炎症の結果生じると考えられています。

【症 状】
全身に必要な量の血液を心臓が送れなくなってしまうために様々な症状が見られますが、無症状の場合もあります。
  • 速い呼吸、呼吸困難、咳
  • 一日中ぐったりしている
  • 動脈血栓症による後ろ足麻痺
*動脈血栓症
腹部の動脈に血のかたまり(血栓)が詰まってしまうために後ろ足に血液が行かず、後ろ足が麻痺してしまう病気です。突然発症し後ろ足の麻痺、痛み、前足だけで移動するなどの症状を示します。症状が軽い場合には片足だけの場合もあります。

心筋症は猫の心疾患としてきわめて重要です。とくに原因不明で急激に悪化傾向を示すため、できるだけ早期に治療する必要があります。よってこのような症状が見られたら早急に動物病院を受診してください。

 
第7回 「心臓の話」

 心臓の働きと構造
全身の細胞に必要な酸素や栄養分は血液によって運ばれます。また、細胞の活動の結果生じた二酸化炭素や老廃物は血液によって除去されます。 このような血液の流れを作っているのが心臓です。心臓は全身へ血液を送るポンプの役割を担っています。 心臓には右心房、右心室、左心房、左心室の4つの部屋があります。右心房と左心房の間は心房中隔、右心室と左心室の間は心室中隔という壁で隔てられています。 さらに、心房と心室の間の房室弁、左心室と大動脈の間の大動脈弁、右心室と肺動脈の間の肺動脈弁によって血液の逆流を防いでいます。
左心室から排出された酸素の多い血液は動脈を通って各臓器に送られ、二酸化炭素を回収して静脈血となり右心房に戻ります。右心房から右心室へ送られた静脈血は 肺動脈を通って肺へ送られ、酸素と二酸化炭素を交換して左心房・左心室へと戻ってきます。 何らかの原因で心臓のポンプ機能に異常が生じると、全身へ送り出す血液が減少してしまいます。そのため正常なときも多く働かなければならず、弱った心臓の負担が 増すことになってしまいます。このようにして心臓の病気が進行していきます。
中年齢から高年齢の犬でも最も多い病気〜僧房弁閉鎖不全症〜
本来は左心房から左心室へと一方向へ血液が流れ、左心房と左心室の間にある僧房弁によって血液が逆流するのを防いでいます。この僧房弁が何らかの原因で完全に閉じ なくなると左心室から左心房へ血液が逆流してしまい心臓に負担がかかってしまいます。このような病気を僧房弁閉鎖不全症といいます。
発症しやすい犬種
マルチーズ、トイプードル、シーズー、チワワなどの小型犬では高齢になると発症しやすくなります。また、キャバリヤは遺伝的な影響があり比較的若齢でも発症することがあります。
症状
初期であれば日常生活にはほとんど支障なく生活できますが、病気の進行により運動時や興奮したときに呼吸が乱れやすくなり、咳も出始めます。さらに進むとあまり動こうとしなくなり、 安静時でも咳が出るようになります。
治療法
僧房弁閉鎖不全症は治療により完治する病気ではありません。そこで薬を飲むことにより心臓にかかる負担を減らしたり、心臓の動きを助けて症状の進行を遅らせるという生活の質を向上させることが 治療の目的になります。日常生活での注意点としては病気の状態に応じた運動制限や塩分制限が必要です。

 
第6回 「シャンプーの落とし穴」

 自分の愛犬が皮膚病になったら、まずシャンプーをしてみるという飼い主さんが結構いるのではないでしょうか?もちろん、シャンプーというのは 場合によっては皮膚病の治療のひとつになります。しかし逆に今の症状をさらに悪化させてしまう場合があることを忘れてはなりません。
かさぶたやフケはシャンプーで洗うと確かにきれいになったようにみえますが、2、3日後に「また皮膚が脂っぽくなってきた」「フケが出てきた」 というようなことはよくあります。 状態にもよりますが、脂漏症を伴わないアレルギー、アトピーの犬のシャンプーは3〜4週間に1度の割合で十分だと思います。 当然、シャンプーをして皮膚を清潔に保つことはとても大切なことですが、過度のシャンプーはもともと犬の皮膚に備わっているバリア機能を破壊してしまうことがあるのです。 シャンプーの頻度については、症状により全く異なるため獣医師とよく相談して決めるのが良いでしょう。 皮膚病の犬のシャンプーで気をつけていただきたい点を最後に示しておきます。
@シャンプー時の水温は25〜27℃くらいで行う
Aシャンプーをした後はよく洗い流すこと
Bシャンプーをきれいに水で流した後はできるだけタオルドライで、その後お散歩に行き日光での乾燥が良いでしょう。ドライヤーを使う場合は冷風が良いでしょう。

 
第5回 「毛包炎のお話」

 夏場に多く見うけられる皮膚病のひとつとして毛包炎があります。「背中などにできものができている」という主訴で病院に連れて来られるケースが 多いように思います。特に、パグやボストンテリアなどの短頭種・シュナウザー・プードル・シーズーなどのアレルギー好発犬種に多く見られます。 原因は、もともとアレルギー体質で、夏場の高温多湿な時期に細菌が毛穴の部分に感染し併発するケースか、シャンプーの不十分な乾かし、不衛生な環境 によっても起こります。膿皮症と同義語で使用されたりもしますが、毛根一致性に感染が起きている場合を毛包炎と診断できます。 もちろん、早期に治療されなかったり、不適切な処置により症状が拡大し、全身性の膿皮症に移行していくことも多く有ります。治療は シャンプー、免疫療法、抗生物質の内服、消毒などがあります。症状としては、小さな丘疹(5ミリくらいのできもの)、膿疱(黄色いうみの溜まったできもの)、 痂皮(かさぶた)、色素斑など様々な病態を示すため状態に応じて治療を選択していくことがとても大切になります。シャンプーをすれば清潔になると 思われがちですが、シャンプーすることによって逆に悪化するケースもかなり多いようです。

 
第4回 「脂肪織炎のお話」

 「あれ、何かできものができている。」と発見される病気のひとつに無菌性脂肪織炎というものがあります。最初はイボのような小さなかたまりで、そのまま 消えるものもありますが、ほとんどは除々に大きくなり、自壊(ベトベトでうんだような液体が出てくる)し、かさぶたができてしまいます。 治療をしないで、そのままにしておくと体のあらゆる部分に広がってしまい、発熱・食欲不振・嘔吐を伴うこともあります。 原因ははっきりとは解明されていませんが、自己免疫疾患だと考えられています。それゆえ、治療も免疫を抑制していくお薬を使っていくため、できるだけ 副作用の少ないお薬の内服が必要となります。「小さなイボ、それが実はワンちゃんの大きな敵となるかも知れません。」イボだと軽視しがちですが、早めに 来院されることをおすすめします。

 
第3回 「冬から春先に起こる皮膚病のお話」

 寒い日が続いておりますが、今回はこの時期に多く見られる寒冷凝集素症という皮膚病についてお話しましょう。 この疾患はそれほど多くはありませんが、冬〜春先にかけてポメラニアン・ミニチュアシュナウザーなどに比較的多く見られる皮膚病です。 原因ははっきり立証されていませんが、自分の免疫バランスが崩れることにより過剰にIgMという抗体が産生されることで発症します。 症状としては、体の末端部、特に耳の辺りのふちのかさぶた、色素沈着(耳のふちが黒くなる)、耳に亀裂が入ってさけてしますといったものです。 暖かくなり自然治癒する場合もありますが、そのまま治療しないと耳が壊死(腐っていく)していく場合も多々あります。さらに自己免疫疾患ですので 貧血や、白血球の上昇がみられ、食欲、元気がなくなったり、呼吸が苦しくなったり、まっ黄色の尿が出たりする自己免疫性溶血性貧血を併発することもあります。 お耳などが毛が抜け、冷たい触感で、色が変わってきたりするような症状がでたら来院して獣医さんに是非みてもらってください。

 
第2回 「アレルギーについてのお話」

 今回は、犬猫の皮膚病の中で最も多い疾患であるアレルギーについてお話します。前回も少しお話したように、毛が抜けて赤くなり、かゆがって 舐めるというのが最もわかりやすいアレルギーの特徴です。しかし、人と同じように犬猫においても様々なアレルギーがあります。アレルギーの 原因となるものには、生環環境中のハウスダスト、食物、散歩時に通る草木、食器、ノミ、ダニ、毛布、じゅうたんなどいろいろなものがあります。 それらの原因を見つけるために何に対して、アレルギーがあるのか検査をすることは確かに重要なことかも知れません。しかし、実際検査をして陽性(アレルギーの原因) となったものを全て除外してもアレルギーの症状が改善しないワンちゃんが結構いるというのも事実です。
 アレルギーとは生まれながらの体質に関与していることが多いため、人の花粉症などと同じで、完治するというのはまれです。つまり、お薬を長期間飲ませなくてはいけないのです。 アレルギー治療において、一番大切なことは、かゆみを止めてあげること、毛を生やすことだと思いますが、それと同時にどのようなアレルギーの可能性があるかを獣医師に診断して もらい、それを考慮にいれた上で、いかに体に負担の少ないお薬を飲んで、アレルギーと付き合っていくかということです。次回は、冬〜春先に起こるちょっと変わった皮膚病をご紹介しましょう!

第1回 「これって皮膚病?」

「これって皮膚病?」と飼い主さんがすぐに発見できるように、皮膚病とはペット達の皮膚に病変がみられる最も 分かりやすい病気の1つです。と同時に、診断、治療、コントロールはとてもむずかしいのです。皮膚病には、アレルギー、自己免疫疾患をはじめ数十種類もの病気が あります。かゆい・皮膚が脂っぽい・赤い・かさぶたができているなどが一般的な症状です。 このような症状があれば、お早めに動物病院で診てもらいましょう。さて次回はワンちゃんのアレルギーについてお話しましょう。

足跡
COPY RIGHTS 2007(C) AONO PET CLINIC. ALL RIGHTS RESERVED.